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ネットに落ちているのは成功談ばかり——だから私は、AIに「失敗」を貯めることにした
AIの答えが「一般論」で止まってしまうのは、なぜだろう
AIに相談したのに、返ってきたのが、どこかで読んだことのあるような当たり障りのない答えだった。
そう感じたことはないだろうか。
これは、AIの性能が足りないからではないことが多い。
AIが、あなたのことを何も知らないからだ。
あなたがどんな仕事をしていて、過去に何を試して、何がうまくいかなかったのか。
それを知らなければ、AIに出せるのは一般論しかない。
逆に言えば、その情報さえ渡せば、答えは急に「自分ごと」に変わる。
このAIに渡す背景情報のことを、コンテキストと呼ぶ。
そして今、AIを使いこなしている人ほど、このコンテキストを日々こつこつと貯めている。
私はこれを、コンテキスト貯金と呼んでいる。
貯めるべきは、成功談ではなく失敗談だと思う
ここで一つ、私が強く思っていることがある。
貯めるべき情報は、成功体験より、失敗談のほうだということだ。
理由はシンプルで、ネット上には成功談しか落ちていないからだ。
「これで月◯万円になりました」「この方法でうまくいきました」。
そういう情報なら、検索すればいくらでも出てくる。
AIも、そういう情報はすでにたっぷり学習している。
だから、わざわざ自分が貯める必要はない。
けれど、失敗談はちがう。
「この方法を試したけれど、自分の場合はここで詰まった」「このツールを入れてみたが、結局使わなくなった」。
こういう情報は、誰もわざわざネットに書かない。
書いても得をしないからだ。
つまり、失敗談は、AIがどこからも学習できていない、あなただけの資産ということになる。
しかも実務では、失敗談のほうが圧倒的に役に立つ。
成功談は、その人の環境だからうまくいっただけ、ということが多い。
でも「ここで詰まる」という情報は、次に同じ道を通るときに、確実に効く。
AIに「前にこれで失敗したんだけど」と伝えられる状態を作っておけば、同じ穴に二度落ちなくなる。
貯め方は、大げさでなくていい
コンテキストを貯めると聞くと、専用の機材を買ったり、大がかりな仕組みを組んだりする話に聞こえるかもしれない。
実際、会話を常時録音して文字に起こしておくツールを使っている人もいる。
それも一つの方法だ。
ただ、そこまでしなくても始められる。
大事なのは、「後から自分が読み返せる場所に、判断とその理由を残しておく」という一点だけだ。
たとえば、何かを決めたとき。
なぜAではなくBにしたのか、その理由を一行だけ書き残す。
何かがうまくいかなかったとき。
何を試して、どこで、なぜダメだったのかを書き残す。
それだけで、半年後の自分にとっても、AIにとっても、他では手に入らない情報になる。
正直に言うと、私もまだできていない
ここまで書いておいて何だが、私自身、このコンテキスト貯金がちゃんとできている自信はない。
記事の下書きや、作った仕様書のような「成果物」は、きちんと保存している。
けれど、そこに至るまでの過程——なぜこの構成にしたのか、最初に試した案がなぜボツになったのか、どのツールを入れてみて結局やめたのか。
そういう情報は、その時々の会話の中に流れていって、そのまま消えてしまっている。
つまり私が貯めているのは「結果」であって、「判断」と「失敗」ではなかった。
いちばん価値があると自分で言っておきながら、いちばん貯め損ねているのが、そこだった。
AIに任せること、人が最後まで手放してはいけないこと
コンテキストを整理したり、要約したりする作業は、AIに任せていい。
けれど、「何を残すと決めるか」だけは、人の仕事だ。
何が自分にとっての失敗で、何が判断の分かれ目だったのか。
それを見分けられるのは、その場にいた自分だけだからだ。
AIは、渡した情報の分だけ賢くなる。
逆に言えば、渡さなかった経験は、なかったことになる。
その場のチャットに、置き去りにしない
AIとのやり取りで得た気づきを、その場のチャットの中に置きっぱなしにしないこと。
今日の失敗を、明日の自分とAIのために、一行でいいから外に出しておくこと。
AIに「同じ失敗を2度と起こさないよう、記録しておいて」と話すだけでよい。
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