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会社に参謀がいなくても——AIに「経営企画室」を任せたら、判断の質が変わった

会社に参謀がいなくても——AIに「経営企画室」を任せたら、判断の質が変わった

新しい事業のアイデアを思いついたとき、誰に相談しているだろうか。

大きな会社なら、経営企画室があり、市場を調べる人がいて、数字を検算する人がいる。
けれど個人事業主や小さな会社では、その役割を全部ひとりで背負うことになる。
調べる時間もない。
相談できる相手もいない。
だから「とりあえず作ってみる」から始めてしまう。
そう感じたことはないだろうか。

これは、能力が足りないからではないことが多い。
「参謀」の役割を担う人が、そもそもいないだけだ。

今回、私はその参謀の役割を、AIに任せてみた。
結論から言うと、判断の質が目に見えて変わった。
その過程を、つまずきも含めて書いてみたい。

「すごい、作りたい」から始めて、何度も作り直してきた

作ること自体は、難しくなかった

これまで私は、いくつものサービスを作ってきた。
そして何度も、同じ失敗を繰り返してきた。
アイデアに興奮して、すぐに手を動かす。
形になってから「価格はどうする」「誰に売る」「どうやってお金を受け取る」と考え始める。

いちばん苦労したのは、AIチャットボットを作ったときだ。
サービスを作ること自体は、それほど難しくなかった。
大変だったのは、その先だった。

販売の決済には、Stripeという決済サービスを使う。
ところが、Stripeで売るためには、決済まわりのセキュリティについて、いくつもの要件をクリアする必要があった。
管理画面の守り方、ログインの仕組み、不正な利用への対策。
作り終わったあとで、それを満たすために、またあちこちをこねくり回すことになった。

最初から分かっていれば、最初から組み込めた。
設計図があいまいなまま作ると、あとで必ず戻ってくる。
身をもって知った。

今回は、動く前に「設計図」を先に作った

今回きっかけになったのは、LINEやInstagramの運用を自動化する仕組みの動画だった。
見た瞬間に「これは中小企業に必要だ」と思った。
以前の私なら、その日のうちに作り始めていたと思う。

でも今回は、動く前に決めることを全部決めることにした。
決済のセキュリティも、今回は最初から設計図に入れてある。

設計図で先に決めたこと決めなかったら起きていたこと
誰に売るか、誰には売らないか作ったあとで売る相手に迷う
何を、いくらで、どこで売るか値段も売り場も後付けになる
決済の審査やセキュリティの要件作り終わってから、またこねくり回す
自分が月に何時間まで手を動かせるか売れるほど自分が疲れていく
どこまでをサポートするか問い合わせ対応に追われる
やらないことできることを全部やろうとして、何も終わらない

ただ、これを全部ひとりで調べて、数字まで出すのは現実的ではない。
そこでAIに「調査チーム」を作ってもらった。

AIに「調査チーム」を作ってもらった

担当を分けて、それぞれに任せた

使ったのは、自分のパソコンで動く Claude Code だ。
Claude Code には「サブエージェント」という仕組みがある。
AIの中に、役割ごとの担当者を作れる機能だ。
担当者ごとに、仕事の指示書と、使ってよい道具と、提出してほしい成果物を決めておく。
すると、全体をまとめるAIが、それぞれの担当者に仕事を割り振ってくれる。

会社でいえば、部署を作るようなものだ。
ひとつのAIに全部を頼むのではなく、役割ごとに担当を分けた。

担当やったこと
市場調査の担当似た商品の相場、競合がどう売っているかを調べる
規約調査の担当使うサービスの利用規約、法律、税金の制度を調べる
収支計算の担当価格と販売数から、何年目にどれくらいになるかをプログラムで計算する
チェックの担当上の3つの結果を、出典まで開いて確かめる

調べた数字には、必ず出典を付けるルールにした。
出典のない数字は使わない。

自分の経験の、外側まで調べてくれる

私は以前、会社の経営企画室にいたことがある。
そこでの考察は、どうしても自分の過去の経験がベースになっていた。
自分が経験したことの範囲でしか、先回りして考えられない。

AIは違う。
私が経験していないことでも、ほかの誰かの経験がWeb上に残っていれば、それを拾ってくる。
だから、私の想定の外側まで考えてくれるのではないか。
そう期待している。

実際、今回の調査でも、私がまったく考えていなかった論点がいくつも出てきた。
たとえば、LINEの公式アカウントには、売り方によっては使えなくなるルールがあること。
自分の住所や名前を、どこまで公開しなければいけないかの法律上の条件。
どれも、作り始めてから知っていたら、また戻ることになっていた話だ。

本当に想定外まで拾ってくれるのかは、これから事業を進めながら確かめていくつもりだ。

チェック係だけは、別のAIにした

最初の計画には、実はチェックの担当がいなかった。
調べる担当と計算する担当だけで、最後は私が確認するつもりだった。

でも、ふと思った。
会社なら、作った人とは別の人が必ず検査をする。
経営企画室にいた頃、それは当たり前のことだった。
作る人と、検査する人を分ける。
これをAIにも当てはめることにした。

チェックの担当は、調べた担当とは別の、より慎重に考えるAIにした。
自分で作ったものを自分で合格にさせないためだ。

別のAIが見つけた「それっぽい間違い」

3回差し戻して、ようやく合格した

結果として、このチェック係がいちばん働いた。
調査の結果は、最初のチェックで「要修正」になった。
直して、また「要修正」。
3回目でようやく合格した。

見つかった間違いは、どれも「それっぽい」ものばかりだった。

見つかった間違いそのまま進めていたら
出典のページに書かれていない価格が、相場として入っていた根拠のない数字で、商品の値段を決めていた
あるサービスの利用規約を、実際と違う意味で読んでいた使えるはずのものを使えないと思い込むか、その逆になっていた
法律で「省略できる項目」の説明が、公的な情報と逆になっていた自分の情報をどこまで公開するか、誤った前提で決めていた
作業時間の数え方が、実際の月の過ごし方と合っていなかった無理な予定を「大丈夫」と思い込んでいた
決めた価格と、設計図に書いた収支の数字が合っていなかった古い計算のまま、計画を立てていた

最後の一つは、私が相談相手にしていた別のAIが書いた設計図の間違いだった。
それを、パソコン側のAIが見つけて「この数字は古い計算のままです」と報告してきた。
AIの間違いを、別のAIが見つける。
これが実際に起きた。

AIは間違える。
だから、間違いを見つける仕組みを作る

AIに任せると間違えるから不安だ、という声はよく聞く。
その不安はもっともだと思う。
実際、今回もたくさん間違えていた。

でも、人だって間違える。
だから会社には検査の仕組みがある。
AIも同じで、間違えないAIを探すより、間違いを見つける仕組みを作るほうが現実的だった。

AIに任せたこと、私が手放さなかったこと

AIが出すのは「選択肢と根拠」、決めるのは私

全部をAIに任せたわけではない。
役割ははっきり分けた。

AIに任せたこと私が手放さなかったこと
相場や規約を調べ、出典を付けて整理するどの価格で売るかを決める
価格や販売数を変えたときの結果を計算するどこまでのリスクを取るかを決める
選択肢ごとの良い点と気になる点を並べるどの選択肢を選ぶかを決める
計算や引用に間違いがないかを確かめる税金や契約など、専門家に聞くべきことを見極める

調査が終わったあと、私の手元には「決めること」の一覧が届いた。
それぞれに、選択肢と、良い点と、気になる点が並んでいる。
私はそれを読んで、決めるだけでよかった。

計算は、税金の手前で止めた

一つだけ、AIにあえて計算させなかったものがある。
税金だ。
本業の収入とも関係するし、制度も変わりやすい。
ここはAIが「それっぽい答え」を出しやすい部分なので、利益は税金を引く前まで。
税金は、専門家に聞くことにした。

AIが作れないものを、無理にAIに作らせない。
これも、今回決めたルールの一つだ。

自分の分身がほしいなら、自分の思いを言葉にする

「自分があと何人かいれば」と思ったことはないだろうか

経営者や個人事業主なら、一度は思ったことがあるはずだ。
自分が2人、3人、5人いれば、もっとスムーズに進むのに、と。

でも自分はひとりしかいない。
だから人を雇って、やりたいことを任せる。
ところが、事はなかなか思いどおりに進まない。
それぞれの人に、それぞれの経験があり、考え方がある。
そこに苛立ちを感じたこともあるのではないだろうか。

私自身、以前、社長からそのことを指摘されたことがある。

100%汲み取れないのは、人もAIも同じ

でも、これは仕方がないことだと思う。
人には個性がある。
全力で頑張っていても、社長の思いを100%汲み取ることは、やっぱり難しい。

そしてそれは、AIでも同じだ。

AIに自分の分身のように働いてほしいなら、AIが理解しやすい言葉で、自分の思いを、できるだけ具体的に、詳しく伝える必要がある。

今回作った設計図は、まさにそれだった。
誰に売るのか。
何をやらないのか。
自分は月に何時間まで動けるのか。
どこまでをAIに任せて、どこからを自分が決めるのか。
それを言葉にして渡したから、AIの調査チームは迷わずに動けたし、チェック係は「設計図と合っていない」と指摘できた。

参謀がいないことは、もう言い訳にならない。
ただし、参謀に動いてもらうためには、まず自分の頭の中を言葉にする必要がある。
それは人を雇うときも、AIに任せるときも、変わらない。

誰の許可もいらない

大きな組織の仕組みをうらやましいと思う必要は、もうない。
自分の手で仕組みを作ることは、誰の許可もいらない。

だから今、AI-sozoを育てている。
新しい事業も、この参謀チームと一緒に、設計図から作っている最中だ。
その続きも、ここで書いていくつもりだ。

AIを参謀にできるかどうかは、どれだけ任せられるか、確かめられるか、先に設計できるか、そして自分の思いを言葉にできるかにかかっている。

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