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骨太方針2026の原文をAIと一緒に読んでみた
ニュースの要約で、分かった気になっていた
そう感じたことはないだろうか。
大きな政策が決まったというニュースが流れる。
3分ほどのVTRと、分かりやすいフリップと、コメンテーターの一言。
見終わったあと、なんとなく理解した気になる。
役所の作る長い文書は、自分の商売とは関係のない世界の話だと思っていた。
存在すら知らなかった、と言っても過言ではない。
今年の7月21日に、骨太方針2026が閣議決定された。
正式には「経済財政運営と改革の基本方針2026」。
今回はじめて、本文を最後まで読んだ。
38ページある。
読んでみたら、ニュースでは一度も聞かなかったことが書いてあった。
AIと一緒に読む、という方法
先に、どうやって読んだかを書いておく。
ここが一番実務的な話だと思うので。
38ページの行政文書を、一人で頭から読み通すのは、正直きつい。
私は途中で必ず投げ出す。
だから今回は、AIに手伝ってもらった。
やり方は単純だ。
読みながら、自分の感想を音声でAIに伝える。
AIが私の意見の裏付けとなる情報の「参照元URL」を提示してくれたり、違う見解を返してくれたりする。
TVを見ながら、家族で「あ~でもない」「こうでもない」話す、あの感じだ。
相手がいるから楽しく読み進めることができた。
AIを道案内役には使う。
違う見解も参考にする。
再考察もする。
でも、判断は渡さない。
そんな感じで、楽しみながら、無事、読み終えることができた。
見つけたこと、その一。
私たちの話は一行だけだった
この文書の中心には、17の戦略分野が並んでいる。
AI・半導体、量子、防衛産業、航空・宇宙、海洋、造船、マテリアル。
2040年度までに官民あわせて370兆円超の投資が想定されている。

正直に書くが、ここは私たち、個人事業主や中小企業のステージではない。
造船所は持っていないし、量子コンピュータも作れない。
では私たちのことはどこに書いてあるのか。
探した結果、見つかったのは、地域経済の章にあるこの一行だった。
> 地域の中堅・中核企業におけるAI導入を進め、地域AXを推進する(P10)
AXというのは、AIトランスフォーメーション。
AIを前提に仕事や産業の形を作り直すことだ。
骨太では「成長の加速装置」と位置づけられ、「全産業で加速する」と書かれている。
つまり、AIを使うかどうかを議論する段階は、国の文書の上ではもう終わっている。
使うことが前提として書かれている。
そして、「地域AX」という言葉は、38ページの中でたった一度しか出てこない。
私たちと同じサイズの会社が名指しで登場するのは、事実上そこだけだった。
読まなければ、絶対に見つからない一行だった。
見つけたこと、その2。
載っているグラフと、載っていないグラフ
こちらは、書くかどうか、正直迷った。
政府が同時に公表しているPR資料に、2枚の印象的なグラフがある。

一枚目は賃金のグラフだ。
2015年から2025年まで、月額の賃金が右肩上がりに伸びている。赤い矢印まで描き足されている。
これは名目賃金だった。
物価上昇を差し引いた実質賃金のグラフは、載っていない。
2枚目はがんのグラフだ。
戦後から現在まで、死亡率がまっすぐ上がり続けている。
これは粗死亡率だった。
高齢化の影響を取り除いた年齢調整死亡率のグラフは、載っていない。
年齢調整死亡率で見ると、日本のがん死亡率は三十年前から下がり続けている。
上がって見えるのは、主に人口が高齢化したからだ。
参照:年次推移:国立がん研究センター がん統計
どちらも、嘘は書かれていない。
都合のいい指標の方が採用されているということだ。
そして念のため書いておくと、これは政府だけの話ではまったくない。
企業のIR資料も、私たちがお客さんに出す提案書も、同じことをしている。
説得のための資料とは、そういうものだ。
私も提案書を書くとき、都合の悪いグラフは載せない。
グラフは嘘をつかない。
選ぶだけだ
だから私は、こう考えるようになった。
分かりやすくまとまった一枚を見て、分かった気にならない方がいい。
何を載せるか or 何を載せないかは、作り手の選択だからだ。
とはいえ、全部を疑い続けるのは疲れる。
だから問いを一つだけ持つことにした。
「もう一つのバージョンは、どう見えるだろう」
実質だったら。
年齢調整したら。
中央値だったら。
縦軸が0から始まっていたら。
この問いは一秒で立てられるし、今回はこれで二つ見つかった。
自分が地図のどこにいるかは、読めば分かる
もう一つ、読んでよかったことがある。
自分の立ち位置が分かった。
17の戦略分野の下に、もう一段ある。
8つの分野横断的課題という枠だ。
新技術立国・競争力強化、スタートアップ、金融を通じた潜在力の解放、人材育成、労働市場改革、家事等の負担軽減、賃上げ環境整備、サイバーセキュリティ。

こちらは投資先の一覧ではない。
本文にはこう書かれている。
17の戦略分野における官民投資を真に実効性あるものとし、その成果を日本全国・全産業へと広く波及させていくための基盤整備
つまり、二つの段はこういう関係になる。
| 何の話か | 登場人物 | |
|---|---|---|
| 17の戦略分野 | 誰が投資を受けるか | 大企業、研究機関、国家プロジェクト |
| 8つの分野横断的課題 | その投資を、どこまで広げるか | 広げられる先=私たち |
8つを並べ直すと、もっとはっきりする。
人材育成、リ・スキリング、賃上げ、サイバーセキュリティ。
これは全部、私たちがこれから直面する圧力のリストだ。
だから、この資料を読むときの問いは「自社は半導体企業か」ではない。
自分の顧客が、これから何に迫られるのか。
そちらの方が、はるかに実務的だ。
AIに渡していいもの、AIに渡してはいけないもの
ここで実務の話に戻る。
骨太方針の本文には「信頼できるAI」という言い方が繰り返し出てくる。
制度の話として書かれているのだが、一人でやっている側にも、同じことが当てはまる。
| AIに渡していいもの | AIに渡してはいけないもの |
|---|---|
| 下書き、たたき台、構成案 | 最終的な判断 |
| 調べ物、整理、要約 | 数字の裏取り |
| 定型のやりとり、変換作業 | お客さんへの責任 |
| 「どこを読めばいいか」の案内 | 読んだことにすること |
私も最初はうまくいかなかった。
ツールを契約して、今までのやり方のまま一工程だけAIに投げる。
これをやっているあいだは、大して変わらなかった。
むしろ確認の手間が増えて、遅くなったことすらある。
変わったのは、仕事の流れそのものを、AIがいる前提で作り直してからだった。
私の場合は、書くAIと、それを検証するAIを分けた。
一つ目に下書きを書かせ、二つ目に事実関係を疑わせる。
この二段構えにして初めて、量産しても壊れなくなった。
それでも最初のうちは、間違いがかなり混ざっていた。
だから今も、最後は自分で見る。
ここは省けない。
というより、ここだけが自分の仕事だ。
預けたものは、預けたきり自分のものではなくなる
少し話が飛ぶように聞こえるかもしれないが、私はこれを同じ話だと思っている。
収入源が一つしかないというのは、その一つを握っている相手に対して弱い、ということだ。
それは勤め先かもしれないし、売上の8割を占める一社かもしれない。
相手が誰かは関係ない。
一本しかない、という形態そのものが弱い。
判断も同じだ。
情報の入り口が一つしかない場合は、その一つが提供したものを信じることになるだろう。
テレビの要約でも、AIの要約でも、その構造は変わらない。
そして、要約の過程で省かれたものは、見えない。
見えないものを、疑う人はいない。
だから、今回、私は大元のソースを読みに行った。
それだけのことだ。
自分の考えを挟んでも、何も変わらない
正直に書く。
38ページを読んで、私の考えを挟んだところで、政策は1ミリも動かない。
分かっている。
でも、挟んだことは無意味ではないと思っている。
その理由は二つある。
一つ目。
自分の生活は、自分でどうにかするしかないからだ。
国がなんとかしてくれる、政府が助けてくれる、天使が降ってきて救ってくれる——そういうことは起きない。だから、できることから始めた方がいい。
そして、こうした国の政策=自分の商売の前提が何年後にどう変わる計画なのか?は、ニュースではなく、原文に書いてある。
読んだ人だけが、先に準備を始めることができる。
二つ目。
都市伝説っぽいかもしれないが、書いておきたい。
行政の文書は、読まれない前提で作られている。
38ページの本文は、驚くほど正確で抑制的だった。
一方、PR資料の方は、都合のいいグラフが選ばれていた。
この差が何を意味するかというと、「どうせ本文までは読まれない」という想定だと考えている。
読む人が増えれば、その「どうせ本文までは読まれない」想定の方が崩れる。
これは精神論ではない。
情報公開制度が存在する理由そのものだ。
見られる前提で書かれる文書と、見られない前提で書かれる文書とでは、書かれ方が異なる。
だから議事録を公開し、資料を開示し、閲覧できる状態にしておく。
閲覧されるかどうかより、閲覧されうる状態にあることが書き手を規律する。
一人が読んでも変わらない。
それはその通りだ。
でも「誰も読まない」と「読む人がいる」のあいだには、一人分の差がある。
そして今は、38ページを読む労力が、AIのおかげでかなり下がった。
誰の許可もいらない
制度が変わるのを待たなくていい。
誰かが要約してくれるのを待たなくてもいい。
自分の商売に関わる決定が公表されたと知ったら、ニュースで分かった気になる代わりに、元の文書を自分で読んでみる。
全部読まなくてもいい。
自分に関係する一行を探すだけでいい。
私の場合、38ページの中でそれは一行だけだった。
でも、その一行は確かにあった。
自分の生活を、少しだけ自分の側に取り戻す作業には、誰の許可もいらない。
最後に、本音を書いておく。
私は、自分だけが得をする話には、あまり興味がない。
自分の人生が楽しくなって、その分だけ、自分の知っている人の人生も楽しいものになる。
そういう形でなければ、たぶん続かないと思っている。
私も嬉しくて、あなたも嬉しい=Win Win
AIは、そのために使える道具だと思っている。
今のところは、そう思っている。
だから今、AI-sozoを育てている。
まずは、自分が今どのくらいAIを仕事の流れに組み込めているかを確かめてみてほしい。
3分ほどで終わる。
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