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翻訳や多言語対応に、そのつど手間がかかっている——「用語集を先に渡す」「逆翻訳で確かめる」で、ぶれを減らす
海外のお客さまからメールが届いた。
返信を書こうとして、辞書を引き、翻訳サイトに貼り、訳文を読み直して、また直す。
そう感じたことはないだろうか。
短いメールなら、まだいい。
商品説明、案内文、ホームページの文章となると、そのつど手間が膨らむ。
しかも、前回と今回で言葉づかいが違う、という別の悩みまで出てくる。
これは、語学が苦手だからではない。
「そのつど、ゼロから訳している」ことが、時間もぶれも生んでいる。
翻訳の手間は、二つに分けて考える
時間の問題と、ぶれの問題
翻訳や多言語対応がしんどい理由は、実は二種類ある。
| 悩み | 中身 | 効く手 |
|---|---|---|
| 時間がかかる | 訳す作業そのものが重い | AIに下訳を任せる |
| ぶれる | 同じ言葉が、訳すたびに違う表現になる | 用語集と文体を先に渡す |
| 不安が残る | 意味が合っているのか、自分では確かめにくい | 逆翻訳で確かめる、人の確認を入れる |
ただ訳してもらうだけでは、二つ目と三つ目が残る。
ここを補う頼み方を、順に見ていく。
手順一:用語集と文体を、先に渡す
自社の言葉を決めておく
翻訳のぶれの多くは、用語の揺れから来る。
「お客さま」が、ある日は customer で、ある日は client になる。
サービス名や商品名が、勝手に直訳されてしまうこともある。
そこで、先に用語集を作って渡す。
| 日本語 | 訳語 | メモ |
|---|---|---|
| お客さま | customer | client は使わない |
| (自社サービス名) | (訳さず、そのまま表記) | ローマ字表記に統一 |
| お問い合わせ | inquiry | ボタン表記は Contact |
この表を、翻訳を頼むたびに冒頭に貼る。
用語集は、最初は数語でいい。
使いながら、少しずつ足していく。
文体と読み手も伝える
もう一つ、伝えておきたいのが文体だ。
「読み手は海外の個人のお客さまで、丁寧だが堅すぎない文体にしてほしい。
用語は、次の用語集に従ってほしい」
同じ内容でも、社内向けの報告と、お客さま向けの案内では、ふさわしい言葉づかいが違う。
誰に向けた文章なのかを伝えるだけで、訳文の印象はかなり変わる。
手順二:逆翻訳で、意味のずれを見る
自分で読めない言語こそ、確かめ方が要る
訳した文章が、正しいのかどうか。
相手の言語が読めない場合、これがいちばん不安になる。
そこで、逆翻訳を使う。
訳文を、もう一度、日本語に訳し戻してもらう方法だ。
「次の英語の文章を、直訳に近い形で日本語に戻してほしい。
元の文章との意味のずれがあれば、指摘してほしい」
元の日本語と、戻ってきた日本語を、並べて読む。
意味が変わっていたり、ニュアンスが抜けていたりしたら、そこに違和感が出る。
その箇所だけ、言い直して訳し直す。
逆翻訳でも、見つからないことはある
ただし、逆翻訳は万能ではない。
同じAIが訳して、同じAIが戻すので、同じ勘違いを繰り返していても、気づけないことがある。
また、敬語の強さ、皮肉、冗談、地域による言い回しの違いは、逆翻訳では見えにくい。
あくまで、大きな取り違えを見つけるための、一つの手段だと考えておく。
手順三:大事な文書には、人の確認を入れる
確認をかける文書を、決めておく
すべての文書に、人の確認を入れる必要はない。
確認が要るかどうかは、間違えたときの影響で決める。
| 文書の種類 | 人の確認 |
|---|---|
| 日常のやりとり(挨拶、簡単な返信) | AIの訳と逆翻訳で足りることが多い |
| 商品説明、ホームページの文章 | ネイティブ、または翻訳の専門家に確認してもらう |
| 契約書、規約、法律や医療にかかわる文章 | 専門家に確認してもらう。 AIの訳だけで出さない |
契約や規約のように、言葉の違いがそのまま責任の違いになる文書は、AIの訳を下書きにとどめる。
士業の領域に踏み込む判断は、AIにも自分にも任せず、専門家に相談する。
確認してもらいやすい形にする
専門家やネイティブに見てもらうときも、AIの下訳があると、話が早い。
ゼロから訳してもらうより、下訳を直してもらうほうが、時間も費用も抑えやすい。
その際は、用語集も一緒に渡しておくと、確認がぶれない。
ホームページや商品説明を多言語にするときの流れ
日本語の文章を、先に訳しやすくする
多言語のページを作るときは、訳す前に、日本語の文章を整えておくと効果が大きい。
日本語は、主語が省かれたり、一文が長かったりして、訳したときに意味がぼやけやすい。
そこで、AIに頼んで、まず日本語のほうを「誰が・何を・どうするのか」がわかる短い文に整えてもらう。
そのうえで訳すと、訳文もすっきりする。
言語ごとに、確認の深さを変える
対応する言語が増えると、確認の手間も増える。
すべてに同じ手間をかけるのは現実的ではないので、優先順位をつける。
| 優先度 | 考え方 |
|---|---|
| 高い | お客さまが多い国の言語。 人の確認を入れる |
| 中くらい | 問い合わせが来る言語。 AIの訳と逆翻訳で対応し、指摘があれば直す |
| 低い | 試験的に出す言語。 「機械翻訳を含みます」と断りを添える |
最初から全言語を完璧にしようとせず、反応を見ながら広げていく。
その進め方のほうが、小さな会社には合っている。
AIに任せること、人が持つこと
| AIに任せてよいこと | 人が持っておくこと |
|---|---|
| 下訳、言い換え、文体の調整 | 用語集づくり、言葉の方針を決める |
| 逆翻訳による、ずれの洗い出し | 大事な文書の、人による最終確認 |
| 複数言語への展開の下書き | 相手の文化や場面に合っているかの判断 |
「AIが下ごしらえをして、人は判断と確認に集中する」 翻訳でも、この形は変わらなかった。
この考え方は、提案書づくりで試したときにも、同じように効いた。
AIの「それっぽい誤り」を、人の目で確かめる工程を挟む。
その一手間が、信頼できる仕上がりを支えている。
言葉の壁を、低くしておく
用語集が育ち、頼み方が決まると、多言語対応は「毎回の大仕事」から「いつもの作業」に変わる。
海外のお客さまへの返信も、案内文の展開も、手が止まる時間が短くなる。
大きな組織の仕組みが変わるのを待たなくても、自分の言葉の壁は、自分の手で低くできる。
それには誰の許可もいらない。
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